今日は、奥田祥子さんの等身大の定年後~お金・働き方・生きがい~ (光文社新書)をご紹介します。
作者の奥田祥子さんは近畿大学教授・ジャーナリストです。同じ取材対象者に継続的にインタビューを行うという手法で研究活動を行っています。
私がこの本を手に取った理由は、50代になり60代になったらどうするかを考えたからです。
この本を3行で要約
・定年後に再雇用、他企業に転職、フリーランス、NPO職員となった人たちのそれぞれの事例を紹介
・40代半ば頃から定年後を見据えて計画をたて準備をした人がセカンドキャリアに成功している。
・組織内で出世しつづけることが定年後の人生を充実させるとはかぎらず、マイナスに働く可能性もある。出世した人ほどプライドが捨てられずに壁にぶちあたっていることが多い。
こんな人におすすめ
・40代半ばから50代で、役職定年や定年という言葉が気になってきた会社員や公務員の方
要約
定年後再雇用の事例
定年後を見据えずに社内での出世競争に全力を注いだ男性の事例。
社外で通用するスキルを身に着ける余裕はなく仕事に明け暮れ、その社内だけで通用する調整能力などのスキルしかありませんでした。一方、上位管理職になるのでプライドは高くなりました。
役職定年を迎えてそれ以上出世できず、さらに定年後再雇用になるとかつての部下にあごでつかわれる経験をすることになりプライドがぼろぼろになってしまいました。
社員のメンタルヘルス対策という課題に取り組みつづけたために、専門家にはなったものの管理能力が評価されずに出世しなかった男性の事例。
その男性は出世ではなく仕事内容にこだわったため、役職定年後も再雇用後も前向きに仕事に取り組め、職場からも専門家として評価されるという充実した人生を送っています。
定年後も同じ会社で再雇用を選ぶ。という選択をした場合は、プライドを捨てられるか、業務そのものが好きかということがポイントのようです。
定年前後で他企業に転職
60歳の定年前後でのホワイトカラー転職は、技術系専門職や有資格者のようなスペシャリストでないと狭き門であり、大半は警備、介護、マンション管理人、清掃といった現業の募集が多いという状況です。
60歳定年前後での転職がしたければ、リスキリングが不可欠となっています。
定年世代は社内の調整能力というスキルはついているかもしれないが、その会社特有のスキルであり社外では通用しないものです。
50代、60代の転職にはポータブルスキルと専門能力が不可欠です。
定年後フリーランスとなる
再雇用ではなく、個人事業主として会社と業務委託契約を結ぶフリーランスとして働くことがシニア世代に注目されています。
シニア世代は、長時間拘束されるのではなく時間の自由の利く働き方を求める人も多いです。本人の体力低下ということもあるし、親の介護のような事情もあるからです。
フリーランスとして働くためには現場で求められるスキルがあることが条件であり、転職と同様にリスキリングが必要です。
ただし、フリーランスは社会保障という意味では被用者として働くよりも充実していません。
失業保険はないし、労災保険の休業補償給付もありません。
一方で健康保険は国民健康保険であり保険料は全額負担となります。
定年後にNPO法人職員になる
定年退職し、長年勤めていた会社での肩書や名刺がないという男性は地域になじみにくいと指摘されることが多いですが、近年は地域貢献NPOなどで働いている人も多くなってきました。
「人のため」をやりがいにいきいきと働いている人もいますが、一方で報酬が少ない・無報酬であることから虚しさを覚える人もいるようです。
まとめ
50代くらいまでは、周りの人は会社組織の一員という意味では似たり寄ったりなのですが、60代になると本当に人生いろいろです。
再雇用で不満を感じながら勤め続ける人、無職でやることがなく暇そうな人、アルバイトに甘んじている人、違う組織に役員として迎えられて充実して働いている人などなど、よく言えばバラエティに富んでいるということですが、実際は社会的ステータスや金銭面で残酷なほど差がついている年代。それが60代です。
人生のさまざまなモデルケースが、50代の私には今後の人生を考える参考材料になりました。
定年後も経済的にも精神的にも充実した人生を送っている人は、40代のうちから、いつまでも現場で通用するようにスキルを磨き(リスキリング)、人脈の構築を計画的に行っていました。
40代、50代で組織内で出世するために熾烈な競争に全力を注いでいると、このような準備ができず、定年後は負け組の人生を送る可能性が高まるとも言えます。同じ組織内で出世していくと調整能力は高まりますが、それはその会社でしか通用しない能力であり、市場価値のあるスキルではないからです。
「中高年リスキリング」にもありましたが、60代から充実した人生を送るためには、どこでも通用するスキルを早くから身につけなければならないのです。
再雇用、転職、フリーランス、NPOと様々な事例がありましたが、60代以降はフリーランスが最も魅力的に見えました。そのためにはリスキリングで市場価値を保っていなければなりません。