書評・要約「中小会社で活用できる『補助金』のことがわかる本 吉野智成・小島健太郎著

今日は、吉野智成・小島健太郎さんの改訂版 中小会社で活用できる「補助金」のことがわかる本

をご紹介します。

作者の吉野智成・小島健太郎さん補助金申請や財務コンサルティングを専門とする行政書士です。

下記の記事で書きましたが、クラウドソーシングサイトで調べると、中小企業診断士に依頼する仕事のニーズは補助金獲得のための申請書を書いてほしい、申請書で重要な要素となっている事業計画書を作成してほしいというニーズが強いことがわかります。

中小企業診断士で食える仕事内容のリサーチ

中小企業診断士になって独立する際には、補助金獲得の仕事は重要な業務のひとつとなるでしょう。

補助金獲得をきっかけに、顧問先を増やすこともできるかもしれません。

いずれにせよ、補助金に精通することは、中小企業診断士として独立するためには必須と言えるでしょう。

そこで、この本を読んで補助金に関する基礎知識を身に着けることにしました。

この本を3行で要約

・補助金は国、地方公共団体が多様かつ豊富に用意しており、3大補助金は「小規模事業者持続化補助金」「IT導入補助金」「ものづくり補助金」である。

・補助金は返済不要の有利な資金だが、採択されるまでだけでなく採択されてからも大変。補助金はあくまで後払い

・経営革新計画や経営力向上計画が都道府県などに認定されれば、補助金獲得だけでなく融資でも優遇される。

こんな人におすすめ

補助金について詳しくなりたい人

改訂版 中小会社で活用できる「補助金」のことがわかる本

要約

・補助金獲得には事業計画が重要。

・申請はできるだけ早くする。時期が遅くなるほど申請の採択率は下がる。

・「経営革新計画」「経営力向上計画」などが地方自治体に法認定されると、補助金採択のうえで加点要素となることがある。その他にも法人税減免や優遇金利での融資といったメリットがある。

・パソコンやタブレットなど「転売可能なもの」の購入は補助金の対象にならない。

小規模事業者持続化補助金

・中小企業の販路開拓をサポートするための補助金

・事業計画は図や表を利用し見やすく、計画が具体的で実行可能性が高いことが求められる。

IT導入補助金

・中小企業のIT導入を金銭的に支援し、業務効率化や生産性向上をサポートしてくれる補助金

・特定企業向けのオーダーメイドのシステムではなく、一般向けに市販されている既存のシステム導入が対象。ホームページ制作やECサイト構築は対象にならない。

ものづくり補助金

・設備投資のための補助金

・「革新性」が必要。自社、同業他社や地域でも目新しい取り組みであること。ハードルが高くなる要因となっている。

・「グローバル市場拡大枠」「DX枠」「グリーン枠」のような特別枠が設定され補助金が増額されることがある。

・金額は大きいが、投資金額に対して後払いであるため、導入当初は自己資金で投資しなくてはならず一時的にキャッシュフローが悪化する要因となる。

・「経営革新計画」が法律認定されている、災害対策、女性活躍(えるぼし認定)、次世代法(くるみん認定)されていれば加点され、採択可能性が高まる。

その他

・「事業再構築補助金」

コロナウイルスを契機とした、ビジネスモデルの再構築を補助するための補助金

・「事業承継・引継ぎ補助金」

事業承継をきっかけに、経営革新に取り組む中小企業を支援するための補助金

まとめ

国や都道府県の補助金は3000種類以上あるそうです。

返済しなくていい大きな金額をまとまって調達できるので、中小企業にとって補助金獲得は非常に重要な資金調達手段と言えるでしょう。

1000万円単位の自由に使えるお金を手に入れようと思ったら、多額の売上が必要になります。

申請の採択率はおおむね50%前後とのことですが、補助金獲得に挑戦したいという事業者が多いのはよくわかりますし、補助金採択率の高い中小企業診断士は引っ張りだことなるでしょう。

個人的に勉強になったのは、「経営革新計画」「事業継続力強化計画」といった計画が地方自治体に認定されれば、補助金申請の際に加点要素となることです。

これらの計画は、例えば環境配慮型のビジネスモデルへの転換だったり、防災対策計画が自治体に認定される要素となり、ひいては補助金獲得にもつながるということです。

また、法人税が軽減されたり、日本政策金融公庫から優遇金利で融資を受けられるというようなことにもつながります。

この本は、補助金について網羅的に詳しく書かれており、非常に勉強になりました。ただ、行政書士が書いているためか、採択されるための事業計画書の作り方という観点では中小企業診断士の書いた本のほうが詳しいと思いました。

補助金獲得は中小企業診断士がおもに行っている業務だと思っておりましたが、誰がやってもいい仕事です。

補助金関連業務に関する知識は独立して働くうえで必要知識と思いますが、同業者だけでなく他の士業やコンサルタントといかに差別化を図るかも考えておかねばならないと思いました。

また、補助金は国・都道府県の方針や政策が具体的に反映されるものでもあります。中小企業診断士取得後は国や地方公共団体の動向にはしっかりと目を光らせておく必要がありそうです。

改訂版 中小会社で活用できる「補助金」のことがわかる本

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