今日は、マリー・マッキンタイヤーさんのポリティカル・スキル 人と組織を思い通りに動かす技術
をご紹介します。
作者のマリー・マッキンタイヤーさんはアメリカのワークプレイス心理学者、キャリアコーチです。日本、韓国、オーストラリア、イギリス、インド、ケニアなど多種多様なクライアントにコーチを行っている人です。
社会人経験を積むと、仕事では非合理なこと、理不尽なことが非常にしばしば起こることは経験すると思います。
また、出世する人が必ずしも能力の高い人ではなく、上司にの好き嫌いで決まっているとしか思えない。ということも結構な頻度で体験するでしょう。
若手、担当者と言われるころは知識、スキルや業務遂行能力が重視されますが、年をとってポジションがあがるにつれ、組織内政治力がないと仕事ができなくなってきます。
会社などの組織は人間集団です。人間はひとりひとりが考え方や利害が違い、その調整が必要になります。その時の調整能力が政治力です。
私は、若いころは人間心理や組織内政治に無頓着でうだつのあがらない思いもしてきました。仕事ができない理由は業務スキルが足りないからだと考えていましたがそうではないのです。
組織内政治にも配慮することも、仕事ができる条件なのです。
目次
この本を3行で要約
・目標、興味、性格の違う人が集まれば必ず利害を調整する政治が必要になる。
・組織は力関係の明確なヒエラルキーであり、少数の人が決定権限があり大多数はそれに従わなければならない。組織では常に上司に従わなければならず、その決定は主観的であると認識する。
・組織で生き抜くには人を動かす力(レバレッジ)を高め、各人のレバレッジの強弱や敵味方を判別し、仲間を増やし、感情的にならず、組織内パワーエリートには逆らわないことである。
こんな人におすすめ
・会社でうまくやっていきたい人、社内政治について学びたい人
・会社での自分が正当に評価されていない。と感じている人
要約
組織人の4タイプ
組織で生きる以上、成功者を目指して行動するべきである。
・殉教者:自分を犠牲にして組織のために尽くすタイプで最終的に燃え尽きる。
・背徳者:自分の利益のことしか考えないタイプで、他の人からの信頼を得られないので最終的に失敗する。
・愚か者:自分にとっても組織にとっても害になる行動をとる
・成功者:組織にとっても自分にとっても利益になる行動をとる
組織の掟
・組織は民主的ではない、組織でいい思いができるかどうかは実績半分、コネ半分
・組織内で生きていく「力」は人によって違う。
・あらゆる決断は主観的である。
・上司は人生の大半をコントロールする
・組織で公平性を期待するのは不可能である。
組織で他人を動かす力=レバレッジ
自分と他人のレバレッジの大小の判断を間違えることは組織で生きていくには致命的である。
組織内の力関係はよく変わる。人の昇進や昇格、組織再編がきっかけとなる。
成功者は状況に目を光らせ、敵を作らず、レバレッジを大きくすることに注力する。
レバレッジが大きい人 | レバレッジが小さい人 |
・スキルや知識が組織内で代わりになる人がいない ・力を持つ人に影響力を及ぼせる。 ・社内で地位が高い ・社内で味方になる人が多くいる | ・スキルや知識が低い ・力を持つ人に影響力がない。 ・社内で地位が低い ・社内の味方が少ない |
レバレッジを高める行動
・結果を出すこと
・知識
・態度:一緒に働くのが楽しいと思われること
・共感力
・ネットワーク力:社内外のネットワークが大きいほど仕事で成果が出せる。
・距離を置く力:物事を客観的に眺める能力
組織内での人間関係
・組織で自由に生きる人は、組織内のよい人間関係は組織でいきるために欠かせない資産であると知っている。支援者や仲間が多いのはレバレッジを高める。
・コネで大事なのは、誰があなたを知っているか。である。いい仕事をしていても適切な人に認知してもらわないと意味がない。
・成功者は友人、パートナー、人脈の強固なネットワークを築いている。人付き合いが無駄と考える人は、無駄な関係が仕事でいい結果を出す助けとなっている可能性がわかっていない。
友人 | お互いに好きだから交際している関係 |
パートナー | 仕事上で協力しなければならない関係 有能で協力的と確信しないと仲間になれない |
人脈 | 助けや情報が必要なときに頼れる人 人脈が広いほどアクセスできる情報が増える ただし親密さがあるわけでもないので頼りすぎるのも危険 |
・仲間を増やせない要因としてはクラスター(年齢、性別、人種など属性が同じ人)、レイヤー(階層)で人間は集まる傾向があり、そこにとどまろうとするから。
組織内自由人が絶対にしないこと
・上司から時間と集中力を奪うこと
・感情をコントロールしない。特に自分は犠牲者と考えること
・自己中心的な目標を立てること
組織における権力
・組織で上に行きたいなら力の配分を正確に分析する。肩書が高く見えても力がない人もいるし、逆もある。
組織内での力レベルが高い人 | 組織内での力のレベルが低い人 |
・重要な意思決定に参加している ・あらゆる階層から認められている ・高い役職の人と話ができる ・他の人に価値ある情報やスキルがある ・重要プロジェクトにかかわっている ・替えのない専門知識や技術がある | ・重要な仕事をしていない ・過去の話ばかりしている。 ・自分を実際より大きく見せる ・会話で重要人物の名前を出す ・ひとりでいることが多い ・自分の仕事に興味がない |
組織で成功するための行動
組織内で成功者となるためには力とそれを身に着けるためのプランが必要
パワー分析 | 自分のレバレッジを客観的に分析する |
パフォーマンス | 組織内で真の力が持てるのは確かな実績を積み上げた人だけである。 |
パーセプション | 仕事は重要性だけでなく露出度も意識する。見えない貢献は組織内で力を高めない |
パートナーシップ | 仕事上のポジティブな人間関係はレバレッジを高める。 |
組織内で影響力の高め方
・誰かに影響を与えるには、自分の言動を意識し、他人の態度を変えたければ自分が変わる必要がある。
・他人を動かすには、直接的に言う方法と、質問などで相手に考えさせて行動させる方法とがある。
まとめ
私が若いころは知識やスキル、実績だけが働くうえで重要と考えていました。
会社は確かに利益を出すために働く場所ですが、しょせん人間の集団であり、好き嫌いの感情がうずまく場所です。
重要な決定が上層部の好き嫌いで決まってしまうことは本当に頻繁にあることです。
私は経済学を学んだのですが、経済学は効率性を考える学問で、人間の感情については無頓着です。
しかし、人間集団で生きる以上、効率性の追求だけで判断するのも失敗のもとだと感じています。
会社もまた人間の集団です。集団でうまくやっていくには、経済学だけでなく、社会学や心理学的な視点を身に着けて社会に出るべきでしょう。
この本は、会社という人間集団でうまくやっていく処世術が言語化されていて、どの組織で生きていくにも大変勉強になると思います。
この本を読むと、会社や組織、上司への見方が変わると思います。
私も、社会人になりたてのころに、このような社内政治の本を読んでおけばよかったと後悔しています。