私は、50代で中小企業診断士の資格取得のために勉強していますが、他にしたいことがあるのに勉強に時間がとられるのはつらいものです。
昨年、私は一度勉強するモチベーションを失ってしまい、一時期勉強を中断して他の資格の勉強をしてしまい、また中小企業診断士の勉強を再開したのは試験の3か月前からでした。
モチベーションを失った理由は「中小企業診断士の仕事をしています。という人をあまり聞かないけれど、この資格とったからといって食えるの?」という疑問がわいたからです。
私が中小企業診断士資格取得を目指す理由は、60代になっても、自分が望む仕事で稼げるようにするためです。それができないなら取得する意味がありません。
勉強を続けるモチベーションを保つには、中小企業診断士の仕事で稼ぐイメージを持つことです。
そこで、中小企業診断士が著者の業務についての書籍をいくつか読んでみました。
これらの本を読むと中小企業診断士の仕事がわかり、活躍しているイメージがわきます。
資格を取って「活躍している」「稼げる」というイメージがもてれば、勉強を続けるモチベーションもわきます。
経営コンサルティング
コンサルティングの作法?中小企業診断士のための実践理論
編著者は、福田尚好さんです。福田さんは中小企業診断士協会の会長や大阪中小企業診断士協会の理事長を歴任された方です。
経営革新、創業支援や事業承継といった全業種共通のテーマや、製造業、物流業、流通業や商店街に対する中小企業診断士のコンサルティング事例集となっています。
また、第三部では企業内診断士、独立診断士がどのような活動をしているのかについて、いわば中小企業診断士のキャリアプラン事例集となっています。
コンサルティングはどのような経営テーマでも業種が違っても、まずは財務分析やSWOT分析、3C分析を活用して現状分析をし、それから計画をたて、行動を行い、検証をする。PDCAサイクルを回すことの支援に尽きるということがわかります。
中小企業診断士のコンサルティング業務が目に浮かぶようです。ただ、事例について総花的に扱っており、ひとつひとつの事例は短いので、テーマや業種について深く勉強したい場合は物足りないかもしれません。
コンサルティングの本質: 中小企業診断士のための実践理論と社会的取組み支援の論理
編著者は先ほど紹介した福田尚好さんです。
この本は業種別コンサルティングの事例として製造業、流通業、宿泊業、健康美容サービス業、中小企業組合、商店街の事例が紹介され、また、業種をまたいだ経営課題に関するコンサルティング事例として事業承継、M&A、海外展開、DXのコンサルティング事例について紹介されていました。
中小企業診断士になった後は、特定の業界に強い診断士となるか、業種をまたいだ経営課題に対応する診断士となる。というようなキャリア選択もあると考えさせられました。
コンサルティングの方法は、中小企業診断士試験で出題されるSWOT分析や財務分析などの手法で現状分析をした後、課題に対して打ち手を提案する。という流れになります。
受験対策で学ぶ知識は実務でも使うので十分な学習が必要な一方で、課題解決に有効な「打ち手」を提案できるように修行していく必要があると感じました。
生産性向上の取組み事例と支援策: 中小企業診断士の知恵と技
編著者は、先ほどの2冊と同様に福田尚好さんです。
まず生産性(産出量/投入量=付加価値/労働量)とは何か。という説明からはじまり、製造業(生産財、消費財)、流通業(卸売、小売)そしてサービス業(宿泊業、ゲームセンター)のそれぞれの企業を対象に、生産性向上のためのコンサルティング事例について紹介されていました。
この本からわかったことは、中小企業診断士に求められることは、生産性向上のために大きなところから細かなところまでいろいろな打ち手を知っておく必要があるということでした。
事例に学ぶ! ざんねんな企業、イケてる企業
著者、大庭聖司さんは、システムエンジニアを経て中小企業診断士を取得して独立し、伴走型支援で活動されています。
比較的小規模の企業を対象にコンサルティングをしてきたということでその体験談をなまなましく書かれており、伴走型支援がイメージできます。
小さい企業は、大企業では考えられないような問題を抱えていることが多いということです。
それに対応するためには、経営全般についての幅広い知識を持つことと、たくさんの人的ネットワークを持つことの重要性が書かれていました。
大庭さんご本人はシステムエンジニア出身なのですが、この本は戦略・組織、マーケティング、創業、お金、IT化に関してそれぞれ事例が書かれています。
小さい会社にはいろいろな問題が生じるので、それに対応して幅広い知識が必要なのです。とはいえ、経歴をいかしてIT化についての事例がもっとも詳しく書かれているように思いました。
この本からは、中小企業診断士試験に出てくるような幅広い知識をもちつつ、専門的なスキルを持つことが重要というように思いました。
また、MBAと中小企業診断士を比較し、中小企業のコンサルティングを頼む場合の、中小企業診断士の優位性にも触れられています。
どちらも経営学をひととおり学びますが、MBAで学ぶ内容は主として大企業での事例が多く、中小企業診断士は中小企業の現場で起きるような問題解決に役立つような知識を身に着けているということです。
また、中小企業診断士は独立業務がないと言われますが、商工会議所やよろず支援拠点のような公的機関で支援担当として採用されるコンサルタントは、事実上中小企業診断士資格が要件となっている。ということです。
公的機関で支援業務を担当する中小企業診断士は多くの経営相談を受けます。相談してくる企業が持ち込む案件はたいてい非常に難しいことが多いとのことです。
なぜなら、コンサルに払う金がないから公的機関に相談にくるのであり、それだけ、問題が難しいことが多くなるのです。
中小企業がコンサルを頼むなら、公的機関で相談経験のある中小企業診断士がいいとのことでした。難しい案件に対応した経験が豊富であり、また、広い人的ネットワークがあることが多いからということです。
中小企業診断士を目指す私からすれば、資格取得後は公的機関への登録を目指す。ということになりますね。
補助金獲得
採択されやすい事業計画書が書ける! 中小企業・支援者のための ものづくり補助金申請ガイドブック〔第2版〕
著者、大西俊太さんは都市銀行を勤務後独立された中小企業診断士です。
資金調達支援、補助金活用支援、創業・IPO支援に従事し、銀行時代は審査部員、法人営業部融資課長、ベンチャーキャピタリストとして、独立後は各種補助金の審査員として、資金の出し手側の豊富な経験から、中小・スタートアップ企業の資金調達に精通されているとのことです。
補助金獲得支援は募集要項の細かい規定や毎年微妙に内容が変わるので、応募書類の作成を苦手とする中小企業は多く、ものづくり補助金は獲得できれば最大1000万円なので、関心を示す経営者は多いとのことです。
補助金獲得支援に成功すればその取引先からの信頼が得られますので、獲得支援スキルは身に着けたいところです。
この本はものづくり補助金獲得のための詳しいマニュアルになっており、まずはこの本の手順通り進めればいいのではないか。と思います。
補助金獲得は中小企業診断士の他、税理士など他の士業、コンサルタント、そして地銀や信用金庫のような金融機関も力をいれているので競争の厳しさも指摘されていました。
企業診断・デューデリジェンス
中小企業を対象とした 事業デューデリジェンスの基礎
著者は先ほど紹介した大西俊太さんです。
事業デューデリジェンスとは、言い換えれば企業の経営診断です。経営改善の提案やM&Aのときにまず必要となりますし、事業計画作成や補助金獲得にも必要な、中小企業診断士の基本的スキルといえるでしょう。
この本はデューデリジェンスの内容や具体的な進め方について書かれており、実際にデューデリジェンスを行う際にはこの本のとおりにすすめていけばいいと思います。実務において手元に置いておきたい本です。
M&A・事業承継
事業承継 買い手も売り手もうまくいくリアルノウハウ
著者の水沼啓幸さんは、中小企業診断士で、地方銀行勤務後に中小企業の事業承継支援専門に行うコンサルティング会社「株式会社サクシード」を創業しM&Aアドバイザーとして活動されている方です。
M&Aというと、企業価値算定や法務といったハードスキルが必要なことは当然ですが、会社はモノを買うように売買できるものではありません。文化の異なる人間集団をひとつの組織にまとめるものであり、人間の機微を理解した微妙なマネジメントスキルが要求されます。
まさに、人間の結婚のようなものです。
M&Aアドバイザーは買い手企業からも売り手企業からも信頼される仲介役であることが重要です。
売り手企業は経営者も従業員もそれまで行ってきた「事業への想い」があります。それをリスペクトしないで、単に儲かりそうだから。で買い手が買収してもうまくいきません。
特に中小企業M&Aに必要な人情の機微を重視した実践的なソフトスキルについて、豊富な事例をもとに解説しています。
M&Aは、売り手企業、買い手企業の双方についてマッチングがうまくいくかどうかを診断しなくてはなりません。企業診断という中小企業診断士の必須スキルがもっとも発揮される業務だと思います。
数字を判断する能力は当然ですが、法務、そして人と組織という観点でも診断スキルが要求されます。
事業承継コンサルティングの視点: 経営革新に向けた伴走的後継者支援の実践
著者は大学卒業後に地元の信用金庫に入社し、中小企業の支援業務をしたのちに、義理の父が経営していた金属加工業の会社に入社し、義理の兄とともにその会社を経営します。
小さな町工場だった会社を年商100億円の会社に育て上げたあと、経営者を退き、経営大学院に入学して中小企業の事業承継を研究したという方です。
中小企業の事業承継について、理論と実体験に基づいて解説しています。
中小企業の事業承継は、その後継者が事実上換金できない株式を先代の経営者から購入したり、相続くすることになりますが、後継者はその資金を用意しなくてはなりませんので、入念な資本政策を必要とします。特に、後継ではない先代の親族に経営に口を出させないかなど、繊細な対応が必要になります。
事業承継したあとも、古参の従業員との関係や組織の文化・体質を変えていくのは簡単ではありません。中小企業は、属人的に運営されていることがほとんどで、人間関係が経営の重要な要素となっていることがほとんどだからです。
私は中小企業につとめていますが、中小企業の実態にあった、理屈通りにならない事情について書かれており、共感のもてる内容でした。
財務・資金繰り
著者は銀行出身の中小企業診断士です。
私も物販を副業でやっていてわかるのですが、商品というのは仕入れてもなかなか売れませんし、小売店とか全部売れるわけでもないのによくやってるなあと思います。
よくつぶれないな。と不思議だったのですが、小売店は重要なのが資金繰り=運転資金を金融機関から借りているわけです。その資金繰り、キャッシュマネジメントについてわかりやすく書かれていてます。
まとめ
ここで紹介した本の著者は中小企業診断士ですが、それぞれ高い専門性をもって活躍されていることがうかがわれます。
中小企業診断士として独立して働くときに求められるレベルもわかり、勉強のモチベーションがわくとともに、どれを専門として売りにしていくのか考えなければならないな。とも思わされます。
中小企業診断士をとった後に、何で稼ぐのか、専門はどうするか。を考えるときに参考になると思います。
専門性とは自分の得意な業界を持つのか、それとも、全業種に共通する経営課題について詳しくなるのか。といったことを意識する必要があると思いました。
つまり、業界か経営課題かのどちらを考えて専門性を磨いていくのかということになります。
これらの本を読んでみて感じたことは、中小企業診断士となって独立して稼ぐためには、資格をとってからも勉強しつづけたり、ネットワークづくりをしつづけなければならないということです。